守墓地者

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「今宵も平和だ…」 僕の隣にいる死神が呟いた。 「そうっすね。平和すぎて、僕の仕事がありませんよ…」 「何を言う。お前の仕事がないほうが良いのだ。墓に何かあったら我々が困るのだから…」 死神は、真顔で言った。 僕は守墓地者。 墓の守り人って所かな? 墓が荒らされたり、壊れたりするのを防ぐ仕事。 まぁ、それは表向き。 裏は全く違う仕事。 「じゃぁな、守墓地者。きちんと、墓の中の者を天界に送ってくれよ?」 「はい。今日は1人だけ入ってきたんで、すぐに送れると思います。」 「頼んだぞ。」 そう言うと、死神は黒いローブの裾を翻し、霧となって消えた。 守墓地者… 僕には名前がない。 「さて…と。早いとこ天界に送ろうっと!」 パチ! パチッ! やる気を出すために頬を軽く叩き、新しく亡くなった人の墓の前に行った。 【北川 哲也】 そう記されている灰色の墓石。 僕は墓石を動かして、声をかけた。 「北川さん!天界に行きますよー!!」 「あー…はいはい」 のそのそと穴から上がってくる人間。 いつ見ても不思議な感じだ。
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