守墓地者

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記憶がない。 それが今まで辛かった。 確かなことは、僕は死んでいるということ…。 いつも薄暗い、寂しい墓地で、僕は常に独り。 こんなに寂しいことはない。 この世に生きる全ての命。 命は生まれては消える。 消えた分、また生まれる。 そうして命は繋がれる。 その人がどんな人生を送ったなんて関係ない。 死んで悲しまれない命があったら駄目なんだ…。 「皆、寂しいよなぁ?…大丈夫。僕はずっとここにいるから。」 誰もいない墓地。 だけど本当は多くの人がいる。 墓の中で一人… そんなのは寂しすぎる。 …僕は君たちを守ってるよ だから安心して眠って下さい… 僕だって死にたいって思った。 分かってる。 すでに死んでるってことは…。 だけど僕はここにいる。 墓を守る為に… 魂を送る為だけに…。 何年も前から、ずっと。 初めのうちは、本当の意味で死にたかった。 本当の意味で眠りたかった。 「…そんな寂しい顔するな。」 声がした方… 大きな木の上に、先輩がいた。 「っ…いつからいたんです?」 「秘密」 そう言うと、高い枝から軽く降りてきた。
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