悲劇

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(ここもか・・・・)  チッと舌打ちして神無月聖世ことメドゥーサは嘆息を洩らす。  気分が悪くなるほど悪意に満ちた気を体に取り込んで気分が悪くなった。  ゼウスにアテナの呪いを解いてもらったのが二十年前、人間界に入り込んだティタン神族達の中で、人間たちの秩序を崩そうとする者たちの後始末をするのが今の聖世の仕事である。 ティタン神族とはギリシャ神話時代の神々の総称である。 個別の場合はティタンとも呼ばれる。  出来ればティタン神族が事を起こす前に片が付けば理想だが、それが無理ならばそのティタンを捕まえて裁き、始末する。 この厄介な仕事を背負い、監視付きで転生したのが十七年前の事である。 「ここは大丈夫だと思っていたんだけどな」  屋上から見える眺めに目をやりながら一人、やるせない気持ちになる。 こんな辺鄙で長閑な田舎町にまでティタネスが足を伸ばしているなんて思っていなかったのだ。 この学校の一キロ四方は田圃に囲まれ、周辺にあるのは古い県営団地と農家の家が何軒か点在するぐらいである。  そんな長閑という言葉を通り過ぎて不便だな、といった所なのに。
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