悲劇

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殺してしまいたくても現在の体だけ殺しただけでは何の意味もない。 また新しい人間に生まれ変わるだけだ。 殺すなら魂が戻れないように本体を殺すべきだ。 だが、残念な事に本体は海底神殿で眠っているのだろう。 それに、殺そうと思ったところで相手は海王だ。 適うはずもなかった。 メドゥーサは諦め半分で今の状況を受け入れるしかない自分を呪いながら、溜め息をつく。 「まだ分からないな。大きな力だけど、人間の中で活動しているから断定は出来ない」  こんな奴に自分の思うようにならない状況をさらけ出さなくてはいけない歯がゆさ。 そうは思っても今は現状を報告するしかない。 そうゼウスに義務付けられている。 「ふ~ん。それじゃあ、知り合いかな?」 「う~ん。どうかな。もし知り合いだとしても嫌な方の知り合いのような気がするな」  お前やアテナみたいな、という言葉を飲み込んで聖世は椅子から立ち上がった。 「以上!報告オシマイ。それじゃ、私は帰るから」  玲旺の言葉も待たずに図書館を出る。 玲旺も聖世を追いかけて来たようだが、図書館の出入り口付近で隣のクラスの女子に捕まっている。  聖世はチャンスだ、とばかりに玲旺から離れて行った。
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