悲劇

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 最近、古典の沢村の様子がおかしい。 どこがどうおかしいとは言えないが、やはりおかしいのだ。 沢村は聖世たちのクラス担任をしていて接する事や話す機会が多いのだが、転入当初とはどこか違う。 嫌な気配を沢村の周囲で感じる事が多くなっていた。  聖世はさりげなく沢村に近付き様子を見る事にした。 「沢村先生、今日の授業でやったところなんですが……前の学校ではここまで進んでいなかったので、このページからこのページまでコピーしてくれませんか。訳を書き込みたいんです」  教科書を手に沢村に話し掛けると沢村は瓶底のような厚い眼鏡越しに聖世を見た。  やはり、おかしい。目付きが変だ。 昔、どこかでこんな思いつめたような目をした青年に出会った事があるような気がする。 昔の知人だ。 一体それは誰だったのか?  しかし、沢村はすぐに元に戻った。 「そうか。君は勉強熱心だな。我が校の生徒がみんな君のようなら助かるのだがね。では次の古典の時間までにコピーしておくよ。訳についてはどうするかね?」 「先生、放課後でも教えて下さいますか?もしよろしければ、先生の空いている時間に水谷くんと一緒に国語研究室に行きます」 「そうかい?じゃあ、早速今日の放課後でもどうだ?」 「分かりました。必ず、水谷くんと行きます」 「それじゃあ、水谷の分もコピーしておこう」  そう言うと沢村は国語研究室の方に行ってしまった。 その背中を睨みながら聖世は嫌な気持ちを味わっていた。 沢村と接するだけで負のエネルギーを感じる。 沢村は何か人に言えないことを背負っているらしい。 (これは沢村について調べる必要がありそうだ)  聖世は玲旺の机の方に歩いて行った。  「玲旺、古典の沢村がおかしい事に気付いてた?」 「沢村?ああ、担任か」 「今日の放課後、一緒に国研に行って沢村について調べよう。いいな?」 「え、俺も調べなくちゃいけないわけ?」
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