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「私の監視人なんだろ。一緒にいなくてもいいのか?」
聖世の言葉に玲旺は言葉に詰った。
「じゃ、放課後に国研だよ」
玲旺に言葉を口にさせる暇も与えずヒラヒラと手を振って教室を出る。
廊下の窓から中庭を見下ろしながら息をつく。
こんな場所で勉学だなんて正気の沙汰とは思えない。
この学校は本当に嫌な位置に建っている。
こんな穢れた土地に学校を建てるなんて人間の気が知れない。
そこまで考えて聖世はクスッと小さく笑った。
そうだった。人間には穢れや憎しみの気配を感じないから関係ないのかもしれない。
そう考えると人間達は聖世よりずっと図太い神経の持っているのだろう。
聖世が中庭を眺めながらそんな事を考えていると誰かが聖世に話し掛けてきた。
「神無月さん……」
聖世の名前を呼ぶ声に、声のした方に振り返る。
「え、誰?」
見覚えはあるが同じクラスの人間ではない。それだけは分かるものの誰だか思い出せなかった。
「先ほどはすいませんでした。頭の方は痛くないですか?」
「ああ、休み時間の時の……」
見覚えのある顔だと思ったら、休み時間に聖世にボールをぶつけてきた人物だった。
内心、コイツふざけるなよ、と思っていたので覚えていたのだった。
「俺、伊東隼人と言います。えっと、今はお一人ですか?」
隼人が心配そうに聞いてきたので聖世は肩をすくめて見せた。
「見ての通り。それが伊東君に何か関係あるの?」
先手を打つべく冷たくあしらった聖世の言葉に、隼人は傍目から見ても気の毒なくらいに落ち込んだ。
「関係ない……ですよね?」
しかし、すぐに気を取り直し、聖世との会話は続けようとする。
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