悲劇

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「違うね。少なくとも神ではないな。ただ神話時代に関係している者なのは確かだ。この感じからすると転生ではなく、実体のない者が沢村に同調しているような気がする」 「実体のない神話時代に関係した者……」  聖世の言葉はあまりにも漠然としすぎていて、同調しているのが何者なのか正体が分からない。 「まあ、奴の事が分かってくれば自ずと同調している者の正体も知れよう」 「ふ~ん。手緩いな。お前らしくない。奴の精神を引きずり回して正体を調べればいいじゃないか」  玲旺の不満そうな口振りに聖世は牽制の意を込めて言葉を重ねる。 「この付近にいるのが奴だけならそれもいいかもしれないが、私が感じているこの感じは奴のものではない。恐らく、奴を操っている大きな存在が奴の後ろにはいるぞ。敵の正体も分からないのに迂闊な事はしたくない」 「それが本命な訳か」 「そうだな。間違いないと思う」 「ティタンなのか?」 「恐らくは」 「俺は何をすればいい?」  玲旺の言葉を待っていたのだ。 聖世は静かに微笑んだ。 「アイツの同僚の中で奴の事情に詳しそうな者の記憶を引き出せ。本人をいじると私達の正体がバレかねないから慎重に事を進めるんだな。出来るか?」 「誰にものを言っているんだ。余裕でしょ。それで聖世はどうする?」 「アイツの物質的なものは私が調べる。住む所とか家族構成とかは本人に聞いても怪しまれないだろ?それと……気になるヤツがいるんだ。私に接触してきた者がいる」  聖世の言葉に玲旺は嫌な予感がした。まさか、と思う。 「伊東とか言う男子学生だ。隣のクラスの者だが、やたらしつこかった。まさかと思うが私の正体がバレたのかも知れないな」 思った通りの聖世の言葉に『あれはお前を口説いていたんだ!』と言いたいのを堪えて玲旺は聖世の肩を軽く叩いた。
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