悲劇

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「そいつは俺に任せておけ。ちゃんと調べておくから」  玲旺は「二度と聖世には近づけないように片を付けておくから安心しろ」と言う言葉を心の中だけで呟いた。  玲旺は聖世に言われた通りの作業を進めるために、聖世より早く国語研究室を出た。  玲王は少し怒っていた。 無意識に手にしている書き写したばかりの古文のノートをギュッと握り潰してしまうぐらいに。 (アイツ、伊東隼人とかいったな。あの図々しさ、聖世に馴れ馴れしくしやがって。大体、聖世と一緒に帰ろうなんてよくそんな事が言えたよな。聖世は俺のなのに)  玲旺の心の声を聖世が聞いたら激しく否定して怒るであろう。  隼人の事も気になるが、今は聖世の期待に応えて沢村の情報を調べる方が先だ。 玲旺自身、聖世があそこまで気にしている沢村の事が気になり始めたのだ。  今まで聖世と仕事をしてきて、聖世の勘が外れた事は全くと言っていいほどなかった。 聖世の怪女としての勘を玲旺は信用している。 とは言っても、これまでゼウスがメドゥーサに課した仕事は、雑魚絡みが多かったから玲旺が聖世の仕事に手を出した事はない。 聖世もそんな事を望んだ事がなかったし、玲旺もその必要を感じなかったからだ。 しかし、今回は違う。 聖世が玲旺の力を必要としていた。 言葉には出さなかったが手伝って欲しいとその瞳が訴えていた。
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