悲劇

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「三組の転校生見たか?」 「あー、見た見た。すごくカワイイんだよな」 「え~?それを言ったら玲旺(れお)くんだってカッコいいよ!」  今、東筑摩高等学校では時期外れに現れた二人の転校生の話題で持ちきりである。  夏も過ぎ、すっかり秋らしくなってしまった十月の初め、神無月聖世(かんなづきせいよ)と水谷玲旺(みずたにれお)は転入してきた。  二人は時期外れの転校生だからというだけでなく噂の的だった。  近寄りがたいほどの美貌を誇り、不思議な存在感を放つ二人だったから尚更だ。  実はそれだけの理由ではなく、ここ最近、この学校周辺で頻発する、若い女性が何者かに連れ去られるという事件を誰もが心の中で忘れたいと思っている。 その結果、タイムリーな時期に転校してきた転校生に意識をもっていっているのかもしれない。 「オイ、隼人、見たかよ。ほら三組の転校生」  そう話し掛けてきたのは隼人と仲が良く一緒にいる事が多い羽田大輔だった。 「イヤ、別に。まだ見てないよ。興味ないし」  隼人は女が苦手だった。 特に最近の女子高生はうるさくて一緒にいるだけで疲れてしまう。
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