新「制」活、スタート!?

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「おはよっすノブ君」 工場の事務所であるプレハブに配置されている、三組のデスクの一つに腰かける事務の二十代後半と思われる女性が、元気に入ってきたノブへの挨拶も早々に、手元の書類を漁る。 「んー。はい、今日の分」 「どもー」 そう言ってクリアファイルに入れて手渡したのは、今日の出張作業の依頼があった依頼主のリスト。この工場では普通の修理屋ではやらないこういったサービスもやっており、新入りのノブは顔を覚えてもらう為に専らこの仕事を任されていた。 ファイルを受け取ったノブは、作業着の上に羽織ったジャンパーのファスナーを下ろしながら、 「最初んとこは九時半から……んじゃ、早速行って来まーす」 挨拶を交わして駐車してある社用車のバンへ向かおうとした。 が、 「いってら――って、ノブ君ちょい待ち。タイムカード忘れてる」 「あ」 事務の女性に引き留められ、出口横に鎮座している機械に、自分のタイムカードを差し込み打刻。高校の頃からちょくちょく出入りしている馴染みか、こういった新しい週間には不慣れなのだ。 「じゃっ! 改めて!」 「はい、いってらー」 軽く右手を上げてドアを開ける。続いてその際にすれ違う形となった先輩社員と挨拶を交わして、鼻歌を交えつつバンへ向かった。 今日の仕事は午前に二件、午後に一件で三件――新人の自分を配慮して余裕を持ったスケジューリングなのだろうが、自動車いじりに慣れていたので時間に空きが出てしまうだろう。――例の少女が入学した我が母校にでも顔を出そうか。 なにはともあれ、これがノブの人間界における新しい生活、その一日始まりである。 「……ふあぁ――ぁふ」 駒ヶ谷大学大講堂、廊下側やや後方の席で、大志は大口を開けてあくびをした。 週明け月曜日の今日、本格的な講義はまだ始まっていない。各講義や構内の利用方法など、いわゆるオリエンテーションの期間という訳だ。 すると、隣で几帳面にメモを取っていた沙羅が手を止め、 「大志君、話を聞かなきゃ」 ボソッと小さい声で、大志の不真面目な態度を注意した。
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