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「ん? 最後辺り、何て?」
「いにゃっ! 何でも! 何でもないから!」
「――あ、そ」
思わず噛んでしまったレナと、それを大して追求しないノブ。ここで微妙な区切りができてしまい、何となく沈黙。目の前では野球部員達がストレッチを続けている。
「うーん、と」
ふと、ノブが話題が無いか少し模索したような素振りを見せ、
「あ、どうよ学校は? こっちの世界のいろはもわかんねぇんだろ?」
彼にしては珍しい世間話を切り出した。
「えっ? その、大丈夫、だと思う。見たこと無い道具とかあったけど、学校っていう場自体は神界にもあるし……うん……」
「そうかぁ。まあ麻美もいる事だし、困ったら色々聞けよ。俺もちょいちょい顔出すと思うしよ」
「うん……」
ベンチの背もたれに寄りかかり脱力しながら話すノブと、自分の膝辺りを見つめモジモジとするレナ。こんな異様な光景の中、ほんの少しの間。
と、
「あ、あり…」
心配してくれた事に対する感謝の言葉を述べようとするも、彼に心配してもらえた格別の嬉しさや、どんな反応をされるのかという不安と気恥ずかしさのせいで、なかなか口に出せない。
どうしてこんなにも素直になれないのか、と自己嫌悪に陥りかけていると、
ポン
「あと、変な奴らに絡まれたら俺か大志に言ってくれ。俺達T! N! A! が制裁を下してやっからな!」
ノブがレナの頭に左手を軽く置き、キリッと無駄に凛々しくした表情を見せた。
そんな、大志に言わせれば「気持ち悪い」表情だというのに、
「~~っ! あ、う……」
レナの顔はみるみる真っ赤に染まり、何も口にできないままうつ向いてしまった。
とここで、
「お待たせしましたぁ~。レナちゃん、ノブ先輩が覗きに行ったりとかしてないよね?」
ジャージに着替えた麻美がノートを抱えてにこやかに再登場。ゴニョゴニョと口篭るレナの心情など、露も知らない爽やかな表情だ。
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