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「いやあああああ!」
息を吹き返した黒タイツが、ジャンプの拍子に後ろから胴をクラッチし、
――ドガッ!!
“なんとー! 高角度ジャーマンンンンン!”
“すんごい気合いでしたねぇ! 投げっ放しにしておくにはもったいないブリッジですよ!”
“さぁ先輩を一人払い除けた○トウ、このままケンニョーショーもぶん投げるのか!?”
後頭部から落とすジャーマンスープレックスでグロッキー状態の青タイツを場外へ落とし、更に赤スパッツの胴を後ろから捕らえ、試合を決めにかかる。
「ふっ!」
「くぅぅっ!」
――が、赤スパッツが警戒しれている為、なかなか上がらない。
“上がらない! ただでさえ投げにくいのにこう耐えられてはなかなか難しいぞ!”
“いやぁ流石に百キロは重いでしょうねぇ”
“だがぶん投げろキト○! ウ○コが出ない程度に力め!”
更にヒートアップする実況や声援に押されたように、わずかに足が上がる。
巨体が浮き上がったという事実に、観客がどよめいた。
だが。
「っ――つあっ!」
ドグッ
もがいた赤スパッツのバックエルボーが側頭部に命中し、胴体のクラッチが外れてしまった。
解放された赤スパッツは滑るようにバックを取り返し、後ろから黒タイツの脇の下に頭を差し込み、胴をガッチリとクラッチ。そして、隙が埋まらない内に力任せに後ろへぶん投げた。
ドガッッッ!!
“うわあああああああ! バックドロップ急降下あああああああ!!”
実況陣が絶叫している暇もなく、反射的に立ち上がってしまった黒タイツに向かって赤スパッツが突進し、
ズドムッッ!!
鈍い音を立てて喉元に叩き込む、渾身のラリアット。首を刈り取るような一撃に、黒タイツの体が宙を舞った。
“ギャアアアアアア! 死んじゃう! 死んじゃうよ!”
“それ以上はやめてくれええええ! 学生プロレスは! 学生プロレスは! 保険に、入れないんだあああああああ!!”
どちらが実況か解説かわからなくなってしまった実況陣の絶叫の中、倒れる黒タイツに覆い被さった赤スパッツを視認したレフェリーがカウントを叩く。
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