因縁のリング!?

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「あー、体育の授業以外は全くやってなかったです。――強いて言うなら、中学からのプロレスごっこでバンプの真似事をしてたんで、それくらいですかね」 「いや、あんな本格的なバンプ、普通真似事で身につくもんじゃねぇだろ……」 この二人の会話から察せられるように、本日初めての練習となった筈の大志は異常であった。 教育係の亀○曰く、プロレスの基本はまずバンプ、つまりはダメージを受けているように見せる、プロレス用の受け身にあるという。当然初めての大志も例に漏れずその指導を始められたのだが、後方へ倒れるバンプの手本を見せられた直後「こうですか?」と見事にやってのけたのである。 通常、このバンプを習得する場合は、着地姿勢の習得、座った状態からの簡単なバンプ、立った状態からのバンプなど、これらのステップを一ヶ月程かけて会得していくものだ。それを初心者である筈の大志はあっさりやってみせたのだから、周囲の先輩が驚くのも当然である。 とは言え、大志には習得までの独自のノウハウがあった。中学生の頃、年単位に及ぶノブとのプロレスごっこで感覚を養い、少し恥ずかしい歴史である喧嘩で倒れ込む時に体に文字通り叩き込んできたのである。 そして、神界における死闘という実体験で、プロレスのリング上以上の実績を――。 「もうロックアップとか教えて良いんじゃねぇの?」 横から新たに割り込んできた声に、少し思慮に入りかけていた大志がハッとする。大志がぼーっとしていた内に、ケン○ョーショーことケンが亀○修こと修に大志の教育方針に軽いアドバイスしていた。 「うーん、受け身は取れているとは言え、今日のところは初めてですし、とりあえず受け身だけにしようかと」 「それもそうか。その辺はお前に任せるわ。――んじゃ、杉浦」 「? はい」 すると、不意にこちらに話が振られてきたと思ったら、 「――明日、朝起きた時……覚悟してろよ?」 ケンはニヤリと意味深な笑みを浮かべ、これまた引っかかる部分を含む言葉を言ってきた。 「へ? あ、はぁ……」 そこに潜ませて意味が全く分からず、ぎこちなく頷くしかない大志の視界の端には、小刻みに方を震わせる修の姿が映っていた。
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