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かなり要約してくれたドクの説明はこうだ。
発端は五代程前。新人歓迎スパーリングの内容に悩んでいたボクシング部の主将から「プロレス志すくらいなんだから丈夫だろ!」という推測から、それぞれから自由に選出したフレッシュな一年生同士でやらせるエキシビジョンを提案されたらしい。更にこの試合の受諾条件として週一度のリングの使用権を提示されたのだが、プロレス用のリングは設営が大変故にリングでの練習がなかなかできない為、マットの状態が違うと言えど当時のUWAの代表は受諾したのである。
それ以来、毎年の恒例行事となった、というのが事の流れ。
「そんな所だ。でも今年はおかしいな……今までならもうちょい一年が馴染むのを待って五月位にやってた筈なんだけど」
説明を終えたドクは難しそうな顔をして顎の辺りを右手で擦った。確かに、その話を聞くと四月も中旬に差し掛かったばかりの今のタイミングで持ちかけられるのも妙な話だ。と言うか、桜井の姿を見たさも把握していたかのようなケンの反応は間違っていたという訳か。
そこから後にキトウが続く。
「ちなみに試合まではあっちの練習設備は使いたい放題だし、ボクシングの手ほどきを受けても良いから、行くなら俺に連絡してくれ。取り次ぐ」
「は、はぁ」
そんなんで大丈夫なのかよ、と大志が表情を引き吊らせていると、キトウはハハッと短く笑い声を上げた。
「そんな不安がらなくて大丈夫だって。とにかく怪我しないようにしてくれりゃ良いから。こっちは防具つけるし、何も勝てって訳じゃあ――」
「いや、勝て!」
するとキトウの話をケンが遮り、いきなり無茶な要求を突きつけてきた。
「ケンさん……例の賭けですか?」
「そうだ!」
少し呆れた様子のキトウの発言を聞く限り、何やら面倒な事情があるようだ。
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