第42話:巨木

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「あ……あれです……。あの兎……」 震える声で霊能者を呼ぶと、彼女は既に兎の方を向き、手を合わせていた。そして、先程よりは少し大きな声でお経を唱え始めた。兎は静かにそこに座り、そのつぶらな瞳で私たちを見つめている。蛇に睨まれた蛙のように、身体は緊張し、何かに縛られたように動けなくなった。 身体を汚してしまい、申し訳ありませんでした。 全て私が悪いんです。 私はどうなっても構いません。 お願いです。 どうか、かわいい弟を返してください。 優しいお父さんを返してください。 家族を返してください……。 「血が……」 心からの後悔と謝罪を兎に届くように強く念じている最中だった。 驚いたことに、目の前にいる兎の額からは血の跡が消えていたのだ。
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