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「来るなぁぁぁー!!」
目をつぶり、身体中の体力を振り絞ってあらん限りの大声で叫んだ。
そして、少し経った頃。
「…………」
辺りは静まり返り、時折車の走行音が聞こえてくるくらいだった。あの息遣いは聞こえてこない。きっと諦めて消えてくれたに違いない。
恐る恐る目を開くと、霊は先程と同じ位置で私を見つめ、嬉しそうににんまりと怪しく笑っていた――
* * *
それからというもの、雨の日の深夜に出歩くと、必ずあの女の霊がついてくるようになった。晴れの日に現れないのは、何か理由があったのだろうか。喜ばしいことに、最近では姿を見なくなった。
彼女の衣服は着物のような感じだが変わった作りなことから、昔の人らしいということが分かった。しかし、残念ながらそれだけしか分からず、今だにその正体は不明だ。
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