第3話:幻聴と会話

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高校入学当時。電車通学をしてみたいという単純な理由から、私は隣県の高校を選んだ。 朝の混み合う電車内では、男子高の学生が数人たむろしてシンナーを吸っているようで、辺りには鼻をつく刺激臭が充満していた。もう毎日のことで、大人達は諦めている様子だ。気の弱い私も関わり合いになりたくないので、注意はしなかった。 「……ハイチャエバイイノニ……」 中年女性と思われる囁くような声がした。だが、私が乗車した時、車内には高校生とサラリーマンしかいなかった筈だ。見逃していただけかも知れないが。 一体誰の声なのだろうかと色々考えあぐねていると、またもや声がした。 「ハイチャエバイイノヨ、ネェ?」 今度は耳元ではっきりと。 どうやら私に話しかけているらしいことが分かった。
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