第3話:幻聴と会話

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「“嘔吐”っていうことですか?」 満員電車なので気を遣い、小さな声で問い掛けた。女性は会話が成立したのが余程嬉しいのか、声の調子が上がっている。 「アイツラオイダソウ……イイヨネ?」 「え……?“追い出す”?」 よく分からない問答を繰り返した後分かったことは、彼女が男子高生を追い出したいということ。その為にはハプニングが必要だということだった。 言われてみれば、彼等が電車から出てくれれば、そんなに嬉しいことはない。だが、“吐けばいい”とは……。 彼女はどうやってその提案を現実のものにしようというのだろうか。 「でも、どうやって――」 声の方へ顔を向けようとした時だった。 「オ……オエェェェッ……」 奥の方から、嘔吐する声が聞こえてきたのだった。
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