第3話:幻聴と会話

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仲間の男子が慌てて介抱するも嘔吐は続き、病人を抱えるようにして次の駅で降りていった。吐瀉物はそのままに。乗客達はあまりの出来事に目を剥き、車内は騒然とした。 「あ、あの……」 “あれは貴女がやったんですか?” そう聞こうとして後ろを振り返ったが、声の主と思われる女性はいなかった。というか、私の半径1m付近には女性はいなかったのだ。代わりに、私が話しかけた方向にはくたびれた感の漂う中年サラリーマンがいて、先程から独り言を呟く高校生を奇妙な者を見る目つきで眺めていた。 「……フフフ……」 突如語りかけてきた女性の笑い声。私達の頭上から聞こえてきた。私だけではなく中年サラリーマンも聞こえたようで、ほぼ同時に天井を見上げる。
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