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「これでいいですか?」
ゼイゼイと乱れる呼吸を抑えつつ、大きめのバケツと2リットルのペットボトル3本を霊能者に見せる。
「充分です。では、こちらに来てください」
旅館の女将は私たちを覚えていてすんなり道具を貸してくれ、川の場所も聞き出すことができたのだった。
霊能者はその水を巨木の根にある小さな穴に流し入れるように指示。私は怖がりつつも巨木に近づき、言われた通り、真っ暗な穴へと注ぎ入れた。
「木の根や幹にもかけてください。巨木についた弟さんの血を流すようにです」
「は、はい!」
汗を拭きながら水をまいている最中も、霊能者はお経を唱えている。
そして、川の水が残り少なくなった頃。背後から視線を感じた。
「…………?」
何気なく振り向いた先にいたのは、兎。
真っ白い毛に血の残る、巨木の化身だった。
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