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突然霊能者は身体をびくっと痙攣させ、その場に崩れるように倒れた。駆け寄りたいが、身体がいうことをきかない。母も同じようで微動だにしなかった。
兎と向かいあった態勢のまま気の遠くなるような時間を過ごしたが、私が目眩を起こして倒れそうになった時、状況が変わった。
(動いた……!)
一歩。
一歩。
兎は音を立てることなく、私の方へゆっくりと歩き始めた。
母の啜り泣く声が聞こえる。
一歩。
また一歩近づく兎。
私はゆっくりと目を閉じた。
先程兎が現れた時、私はどうなってもいいと伝えた。
殺されてもいい。
元の幸せな家族が戻るならと――
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