11240人が本棚に入れています
本棚に追加
一段落したので再度外へ出てみると、最初に目に飛び込んできたモノは、恐らく頭を打ったであろう飛び石を中心として飛び散った鮮やかすぎるほどの血の赤い色だった。
「うっわぁ……」
辺りに広がる真っ白な風景にそれはやけに目立つ。自分の中に流れているものだということも忘れ、気味悪さを覚えた。時代劇で観た、斬られた侍や町娘の血が障子にピシャッとかかる場面を思い出す。
気を取り直してその周りを探したが、いくら見ても“あるべきもの”が見つからなかった。家に入り、報告する為に母の元へ。
「お母さん……足跡がね、なかったんだよ」
「『足跡』?」
怪訝そうな顔をする母に頷いてみせる。
「呼び鈴を押してくれた人の足跡がね、なかったんだよ。僕とお母さんの以外はどこにも」
母は不思議そうにしていたが、やがて「見間違いでしょ」と言って済ませた。
* * *
私を覗きこんだあの白いモノ。
消えた足跡。
呼び鈴……。
名探偵がいれば、この謎を解いてくれるのだろうか?だとしたら、是非お願いしたい。あの時の感謝の気持ちを伝える為に。
最初のコメントを投稿しよう!