守護神

全てを超える者

初顔合わせとなるカード、特にその先頭打者は浩幸と対戦してショックを受けることになる。なるはずだった。

だが、実際のところそうはならなかった。この３番打者は、初球から積極的にバットを振ってきたのである。

そして、バットが空を切ってもまるで動揺を見せない。背中からそれを見ていた菅原は、愕然として言葉を失った。

コブラについての情報を敵が得ていることは不思議ではない。２カードをこなし、その存在はもう球界に知れ渡っている。

だが、知識があるということと既に体験しているということには、全くと言っていいほどの違いがある。

それにも関わらず初球から振ってきた打者の姿、それは試合前から菅原が抱いていたある懸念を大きくさせる結果となった。

その懸念は、２球目を打者が打ち上げて内野へのポップフライとなってもぬぐい去ることは出来ず、むしろ大きな疑念へと変わっていく。

一方マウンド上の浩幸は、初見の打者にバットに当てられたことでただ漠然とした不安があるだけだった。だがそんな不安も興奮ですぐに吹き飛んだ。

地鳴りのような大声援がドームを包む。地元の英雄、水橋隆雄がゆっくりと打席へ歩いてきた。