過去にolinas物語

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 神器を渡した後、少年は疲労と脱力感から休憩していた。そんな矢先だった。 「坊主、お休みんとこワリィが聞きたいことがある」  少年の前には数人の男が立ち塞がる。どの男達も筋骨が噎せるほど鍛えあげられ、それぞれ武器を多数所持しており、剣、斧、槍、槌と、様々な種類の凶器を持ち、構えていた。 「邪神を殺ったのはお前か? まぁそんだけ血塗れじゃあ聞くまでもねぇか」 「だったら?」  少年は恐れる様子もなく、顔に付着していた血を丹念に拭き落としている。 「ハッ! カッコイイじゃねぇの!?」  斧を構えた大男が囃し立てる。隣にいた男も豪快に笑うあたり、馬鹿にされているのだろう。 「んなこたぁいい。坊主、神器はどうした?」 「残念だが此所にはもう無いぜ」  即答。少年は両手をヒラヒラさせ、無いことを強調する。 「場所なら教えて……ヤルヨ!!」  刹那! 一番近くにいた男の首が宙を舞う。頭を斬り離された体は中枢を失い、糸が切れた木偶人形のように崩れ落ちる。  仲間が殺されたと気付いた頃には少年の姿はない。 「た、た、助けぇ……  恐怖に駆られた男は最後まで言葉を発することはなく、全身の至る箇所に斬撃を浴び絶滅。倒れた頃には地面には夥しいほどの血が溜っていた。  また首が飛ぶ。人の首がまるで子供の玩具のように次々と吹き飛んだ。  ☆ ☆ ☆ 少年の姿が見えた時には生存者は1人、初め囃していた大男だけだった。瞳孔は開き、辛うじて立ってはいたが触れば砂のように崩れてしまいそうだ。無造作に垂れ流された排尿や脱糞からは異臭がする。 「ぉ、ぉ、ぉねがぃ……じまずぅ……」 「ウゥン? ナニヲダ?」  男は答える前に失神した。少年の変貌した姿に圧され、意識が保てなかったからだ。  一人の少年が起こした惨劇から百年後。この事件は後に〔王座の暴落〕として世界に語られる。
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