水没少女

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プールに張られた水に、魚を投げいれた。 小さなメダカに、真っ赤な金魚。 季節外れのプールの水は暗く濁り、苔と枯れ葉が水に踊る。 屋外のプールは夜の月を不気味に映し、少女は先程入れた魚が入っていた空のバケツを手に取った。 プラスチックの青いバケツを、水面(みなも)に浮かべると、指でそっとバケツを押した。 滑るようにバケツはプールの中央へ。 びゅわっ――― 不意に吹いた冷たい冬の夜風に、バケツは倒れ沈んで行く。 「つまらない人生なんて、転覆してしまえばいいのに…」 少女の体が水に堕ちた。 水没少女
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