10人が本棚に入れています
本棚に追加
ダイは、飛行機の中で静かに眠りについていた。
ふと目覚め暗闇の中、足元を照らす小さなスポットライトだけをたよりにトイレへ向かった。
ドアを開けた時、嫌な匂いが鼻をついた。
異常に嗅覚が優れているダイにしか分からない、微かな匂い、「ん!なんだ?こげくさい!火薬の匂いだ!」とダイは思った。
全身の毛が逆立つ思いがしたが、職業柄か危険な場面に遭遇した場合の心構えだけはできている。
瞬時に冷静さを取り戻し、まず第一に行うべき行動を思案した。
「いたずらに乗客に不安を与えてはいけない。」
「が、協力者が必要だ。」とダイは考え静かにトイレを後にした。
真っ直ぐに乗務員のいる中央のデッキに向かうと、黒人の乗務員が備え付けの椅子に座り居眠りをしている。
ダイは静かにその男を揺り起こし詳しく事情を話したところ、暫く不審な顔をしていたが、男もすぐに状況を飲み込んだ。
時は、世界中で爆弾テロに火がついた頃だった。
何が起こっても不思議ではない。
黒人乗務員は、マーカスと名乗った。
「マーカス、工具箱を用意してくれ。」
耳元でダイがそう囁くと、マーカスは直ぐに壁の一部分を開きそれを取り出した。
「O.K.sir」
最初のコメントを投稿しよう!