旅立ち

4/4
前へ
/53ページ
次へ
二人は急いで疑惑のトイレに向かい、危険物を捜し始めた。 いつ何が起こるのかも分からない瞬間だったが、意外にも二人は冷静に作業を進めている。 くまなくトイレ中を捜しまわったが見つからない。 さすがに二人とも少し焦りが見え始めた。 「しかたない。」ダイはそう呟くとお得意の感覚を使おうと考えた。 ダイは常人よりもかなり五感が優れていたが、特筆すべきは、その第六感にあった。 今日まで、これだけを頼りに生きてきたのだ。 目を瞑り、思考を停止させる。 空白の時の中、すこしずつイメージが浮かび上がる。 暗闇にデジタル時計・・・ 隙間から差し込む微かな光・・・ “手摺だ” ダイは、そう思うとすぐさまマーカスを遠ざけドライバーを片手に静かに手摺を取り外した。 手すりの蓋をドライバーで開けると、中から何やら小さな起爆装置と火薬類が出てきた。 ダイは、慣れた手つきで起爆装置のラインをショートさせない様に切り離した。 「ほっ」 一瞬だけ溜め息をつき、火薬を水に流す。 起爆装置は細かいパーツに分けポケットに入れた。 トイレを出たダイは静かにマーカスに近づき、こう言った。 「ごめん、大丈夫!何も入ってなかったよ。」
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加