我が家

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我が家

異界の空気は心地の良いものではない。葬儀場然り、墓場然り。そこには物質となった故人しか残らないからだろうか。それとも何かが居るのだろうか… そんな空気を我が家でも感じ取ることができる。築10年そこらの新しい家。子供の頃は凄く怖かった。夜になると訪れる漆黒の闇。窓から漏れる街頭の灯りはその闇に呑まれていた。 今でも怪現象は続いている。廊下をパタパタ走る音、誰も居ない2階から聞こえる人が歩くような軋む音。それらは明らかに家鳴りとは違う。 「今、廊下を…白いものが、スーッと…」 下の妹が食事中にもらす一言。廊下に背を向けて食卓に着いている自分には見えないが気配はしっかり分かる。同じく廊下が見える位置にいる母にも見えていたそうだ。 上の妹が本籍のある家から何かを連れてきたらしい。 自分が幼いころ、3歳程だった妹は大広間の隅で何かと遊んでいた。家族にも見えない何かを紹介しようとすることが間々あった。 「ここ、ここ」 勿論見える訳がない。幼児期特有の幻覚なのだろうか。 上の妹はやたら運が良い。そして家族も幸せに暮らせている。悪いものではないらしい。それは分かる。 豪農だった家から憑いてきた何かは座敷童なのだろうと思うようにしている。そう考えると異界のものとも上手く付き合える気がする。墓場や葬儀場も故人が見守ってくれると思えば暖かい。 そう思い今日も床の間にお菓子とおもちゃを置く。未だに馴染めない空気も前向きになれば変わる。そう信じている。
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