家族旅行

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家族旅行

父の会社の保養地に家族旅行。一人千円、家族五人で五千円。食事はなしだったが、温泉付き。もうこの上ない条件。 まだ季節はまだ3月。大雪の影響だろうか山あいの温泉街には雪がまだ残っていた。 宿に付き、車から降りるとやはり肌寒かった。心地のよい冷たさだった。 チェックインを済まし、部屋に到着。…寒い。外の冷気とは別だった。 前にも同じ感覚を経験したことがあった。部屋にそれらしい物はないか探したが見つからなかった。父に凄い剣幕で怒られてしまった。大人しく部屋の写真を撮っていればいいのに。 外は綺麗な夕焼けだった。残雪に夕日が反射し輝いていた。その光で谷間を流れる川はキラキラ輝いている。 温泉は大変気持ちの良いものだった。体も芯まで温まった気がする。父と久しぶりの親子の会話だった。 部屋に戻る。…やはり寒い。風邪だろうかと思い、早めに布団に潜り込んだ。 …寝れなかった。既に部屋は消灯され、廊下の光が僅かに部屋に入っているだけだった。寝苦しい。胸騒ぎ。部屋が青くなり日が昇りはじめた頃意識がなくなった。その間、母親は頻繁にトイレへ向かっていた。 帰りの車の中、家族5人ほぼ無言だった。自分は寝不足がたたったのだろうが、妹2人、父、母もなぜか静かだった。 「温泉気持ちよかったね」 上の妹が言った。 「そうだねー」 家族一同同意した。ただ、もう一度行こうと言う家族は居なかった。 それからひと月程たった頃、父に写真はどうしたのかと尋ねてみた。新品のデジカメを持っていっていた父はさぞかし写真を撮ったのだろうと思っていた。 「一枚もない」 父が言った。続けて 「白い玉が大量に写っていた」 撮った写真のプレビューに玉が写り込み、気持ち悪くてその場で消したらしい。ちょうど自分が御札を探していた時だった。 母にも変なことがなかったか聞いてみた。 「もうあそこの話は止めて。私、見たの。」
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