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猫
猫は愛玩動物としてだけではなく、家の守り神としても珍重されている。
招き猫は人やお金を招くものとして商売をしている家庭に置かれることも少なくない。
また長い間生きた猫は霊的な力を持つと古くから言われているそうだ。猫叉と言うらしい。その期間は10年と言われている。そうなると人語を理解し言葉を喋るそうだ。
母方のお里では自分の知る限り絶えることなく猫を飼い続けている。
長生きする猫も、直ぐに姿を消した猫も居たが、自分と仲の良い奴は今飼われている猫だと思う。
名前は「ちゃーこ」。何故か♂。人間のことが大好きで、他の猫からは脱兎の如く逃げ出すおかしい猫。かく言う拾い主は自分だったりする。
お里で飼われているのは自分が猫アレルギー持ちのため。実のところ、コイツを拾うにあたり不思議な体験をした。
ある日の夢。箱に入った猫が鳴いている。体には「の」の字の変わった模様。ここで目が覚めた。
その日の帰り道コンビニに立ち寄った。不思議なのは普段通らないその道を、どうしてだろうか無性に通りたくなったこと。そのコンビニにも数えるほどしか入ったことはなかった。
買い物を済まし外に出ると、夢に見たダンボール箱が駐車場の隅っこに置かれていた。昨晩の夢が脳裏をよぎり辺りを見渡す自分。すると、手のひらに乗りそうなほど小さく幼い茶トラがジーッとこちらを見つめていることに気が付いた。
「…行くか?」
「ミー」
かすれそうな小さな声。多分喉がやられている。
数奇な縁を感じた自分は猫を片手に抱え自宅へ向かった。
道中、自分の肩の上にちょこんと乗り、さも定位置についたかのような顔をしていたその猫は、家につきミルクを飲むと直ぐに熟睡した。驚く程おとなしかった。
寝姿を覗き込む。その体の側面には、大きな「の」の字の模様がはっきり見て取れた。特に驚きはしなかった。
その後の家族会議で、
「大学生にもなりながら…」
「猫アレルギーの癖に…」
と散々家族に罵倒され、結局お里へと預けられる運びとなった。前科持ちの自分は再び祖父母に苦笑される羽目となった。
現在は、人が来れば必ず顔を出すため一種のご近所アイドルとなっている。心なしか来客も増えたらしい。
夢に現れる位の力はどの猫も最初から持っているのだろうか。ちゃーこには可能な限り長生きして欲しいと願う。そして猫叉となり、たわいもない会話ができるようになることを密かに夢見ている。
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