女郎

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女郎

女郎と言うものはご存知だろうか?時代劇などを頻繁に見ている人にとってはお馴染みのものだったりする。 古くは悪所、明治以降は赤線と言われた風俗街にある風俗店で勤めていた女性のことである。京都では、現在でも花魁としてその名残が見受けられる。また、街道沿い等で営業していたものもあるようだ。 このような店で「飼われていた」女性たちの人生は悲惨なものだったらしい。 まずは、女郎に就く至った生い立ち。これは主に人買いが仲介した人身売買によるものだった。口減らしの為に殺されなかっただけ良かったとの考え方もできるが、売られていった次女、三女には過酷な運命が待っている。 逃げることも許されず、座敷牢に押し込められ、好きでもない男に恥ずかしめられる日々。最後は、当時世界中で大流行していた淋病、梅毒によって命の火を消していった。使い捨てのように死んでいった。 さて、一応旧家出身の自分。親戚連中には怪しい筋の者も混ざっていたりする。今日はその内の一つの血筋について紹介したい。 ある日、何かの用事でその家に連れて行かれた。建物は江戸時代から建っているものらしく立派な造りとなっている。この家にはいくつか気になる点があった。 まず、全体的に窓が少ない。街道沿いは比較普通に採光されていたが、奥の方は余り光が届かない。 そしてもう一点。明るさに関係なく全体的に「黒い」。部屋一つ一つの異様な空気。早く帰りたいと泣き喚いた自分は早々に帰らさせられたことを覚えている。 それから年も過ぎ自分もそれなりに世間が分かるようになった頃、この家最後の当主が亡くなった。まだ若かった。 葬儀も終わり、粛々と片付けがされている時、すみで親戚の大人達が小声で話していた。 「やっぱり病死か…」 「とうとう最後の当主も亡くなったな…」 「やっと終わったな…」 話が全く掴めず、家に戻り祖父に聞いてみた。 「ああ。もうお前に話しても良い頃か…あの家は女郎屋だった家でなあ、代々家業として営んでたんだ。女郎もあの家で随分死んでるはずさ。酷い病気でなあ…」 その時、全て理解した。ラブホテルのような造りの奥の間もあの黒い空気も。 祖父は続ける。 「あそこの家なあ、家族は全員病死しているんだ。最後は全員苦しんで逝くんだ…」 祖父の話では、病気で長生きしない家系らしい。 現在、女郎たちの怨念は浄化されたのだろうか。 その家は今もその場に残っている。
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