得体の知れないもの

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二人が言う。今更白々しいと思いながら、どうせびっくり箱の類だろうとその場所を掘り返した。徐々に姿が見えてくる。ブリキに塗料が塗られているごくごく普通の赤い箱。やっぱり。 「赤い箱があったぞ。お前ら開けろよ。」 ニヤニヤしながら二人に言ってみた。…ん?先ほどとはどうも二人の様子がおかしい。二人は絶句しながら箱を眺め、その後叫びながら一目散に走っていった。意味が分からず取り残された自分。怖くなって箱を開けずにその場に置き、二人を追いかけた。   神社からはかなり離れたところで、なんとか二人に追いついた。先ほど二人が浮かべていた薄ら笑いは消えうせていた。疑問に思い、詳しい事情を聞くことにした。 …二人は正直にたくらみを白状した。本当はジュースの空き缶のなかに『バーカww』と書いた紙を埋めたことを。二人が言うには埋めた時にそんな物(赤い箱)はなかったらしい。赤色をしていたのがまた気持ち悪かったそうだ。 これ以上の追及は止めておいた。謝罪をもらい、加えてお詫びに町の駄菓子屋でおごってもらえる約束を取り付けたので。   人間が本当に怖いものは霊などではなく得体の知れないものなんだと思う。そこにあるはずのないもの、いるはずの無いものこれ以上気持ちの悪いものはない。怪奇現象の怖さも説明がつくのではないだろうか? あの赤い箱は彼女たちの迫真の演技だったのか、それとも他の誰かが埋めたのか、最初から埋まっていたのか。未だに真相は藪の中だ。彼女達に会う機会があれば聞いてみようと思う。そもそも覚えているのだろうか。
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