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水場
湧き水が好きでフラフラ巡ってたりする。県内は一通り回ったのではないかというくらい。各場所を巡って思うことは一つ、
「空気が違う」
パワースポットと呼ばれる場所であってるんだろうか。荘厳な空気を持った場所が多い。八百万の神を祭る神道、その元となった原始信仰。山宮と言われる信仰対象には湧水や滝が多いのも頷ける。
丁度、盆の入り頃だったと思う。当時の彼女と湧き水傍が公園になっている所で話していた。丑三つ時。お地蔵様の顔が街灯の明かりで照らされていた。
気のせいだと思っていた。得体の知れない気配が増えている。表情を変えずに話していたが背中からは冷や汗。背中のみ。
「帰ろうか。」
彼女が言った。
「感じる…?」
聞いた自分が馬鹿だったと思う。
「分かってるなら早く離れようよ。居るよ、沢山」
車に逃げ込む二人。キーをすぐさま回し車を走らせた。
…背中の汗が止まらない。寒い。しかしラジオで熱帯夜だとDJが呟く。
「…後ろ、青い」
彼女が震えながら言う。
「後部席に…多分…子供。あと…後部両ドアの外にそれぞれ。」
若者二人が除霊術など知る由もなし、人通りの多い所に移動しお帰り願った。
幸い、分かってくれたのだろうか気配は消えた。
後日、テレビで霊能者を名乗る怪しげな女性が言っていた。
「お盆に水場は近づくな。」
自分は妙に納得した。
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