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霊道
霊の通り道のことを霊道と言う。また、霊の集まりやすい所を霊場と呼ぶ。これには東北の恐山などが当てはまる。
基本的に怖がりで、下手をすると見えないものが見える自分。いずれにせよすすんでは行かない。数々ある廃墟や心霊スポットも然り。
さて、誰が呼んだか富山三大心霊スポット。このようなものがあるらしい。自分の聞いた所では、坪野鉱泉、牛首トンネル、そして今回話題にする頭川トンネル(旧道)。
話題にするからには行ったと思われる方も居るだろうが、そこは恥ずかしがり屋、引っ込み思案、極度の怖がりな自分。自らすすんで行く筈もない。
行ったことのある友人の話では
「雰囲気だけ。後、落書きが酷い。」
だそうだ。要するになにもなくて拍子抜けしたらしい。なにかあってもらっても困るんだが。
その友人の話は続いた。
「あとさあ、その後幽霊神社行ってみたんだよね。幽霊神社。頭川トンネルのさ、氷見側の近くにあるんだよね。まあ、行ってもやっぱりなにもなかったけど。噂では白い服を着た女が出るって聞いたのにな。残念。」
最後の残念に些か腹がたった。と同時に一言が頭に引っかかった。
「待て。今なんて言った…?白い服の…女?」
友人が答える。
「そうだよ。白い服の女。お前本当に怖がりだな。」
友人が嘲笑する。
自分には心当たりがあった。
幼い頃、お里へ向かう為に頭川トンネル(新道)を良く通っていた。谷間を無理に通した新トンネル。氷見側入り口付近には薄暗く光る電話ボックスが立っている。
普段は夜でも早い時間にお里から帰ってきていた。しかし、その日に通過したのは深夜0時頃だった。
呟く父親。
「気持ち悪い…深夜0時に電話ボックスで電話なんてするなよ…」
家族は自分と運転中の父親以外眠りについていた。
「お父さん…今…電話ボックスに女の人なんて居た…?」
尋ねる自分。答える父親。
「なに言ってるんだ。気持ち悪い。居たじゃないか。白い服で長い髪の。良い子は早く寝ろ。」
不思議に思ったがそれから眠りについてよく覚えていない。
そんな出来事を思い出した。今考えるとやはり女性など居なかった。でも、自分には違うものが見えていたように思う。
モヤで霞んだ電話ボックス。
間違いない。だから父親の言葉に疑問が湧いたのだ。
あの辺りは霊道なのだと思う。そう言うと友人は喜びそうなので黙っておいた。
因みにそれ以来、父はそのトンネルを通ろうとしない。
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