木に宿るもの

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木に宿るもの

古くからある神社に行くと大抵一本は注連縄(しめなわ)を巻いてある木を見ることができる。 街中では木の周囲を公園とし、その木を保護している地区なども見受けられる。 人はそれらの木を見て安らぎ、また畏怖をする。そのためなのだろうか。それらの巨木を切り倒す時、少なからず良からぬことが起こるらしい。 さてここで昔話を一つ。自分が高校生の時に聞いた、母校の七不思議についてが今回の主題。 歴史があると言うこともあり、怪談話には事欠かない学校だった。 ちょうど体育の先生が母校の卒業生だと言うこともあり、これについて様々な話をしてくれた。授業そっち退けのこともチラホラあったがこれは別の話。 この話を自分が聞かされたのは、校内清掃のため自転車小屋横の草むしりをやらされていた時だったと思う。ちょうど真夏日だったこともあり、首にタオルを巻きながら作業していた。 その時、ふと自転車小屋の一角に白い柵で覆われている不思議なスペースがあることに気が付いた。 と言うよりも普段は気にとめなかっただけで、あることは知っていた。が、マジマジと見たことはなかった。 ちょうど作業も飽きてくる時間。よくよく見てみると朽ちかけた大きい切り株が一つ、その横にちょこんと小さな杉の木が植えられていた。 「なんでこんな風になってるんだ?」 単純に疑問に思い、ボーっと見ている自分。それを担任に見られていたらしい。 「○○、その柵の中も頼む。」 渋々了解し、その低い柵を乗り越え除草を始めた。 ちょうど通りかかった例の体育教師。 「○○、その切り株何か知ってるか?」 ニヤニヤしながら聞いてきた。 「杉…ですよね?」 答える自分。 「違うよ。由来だよ。その木なあ、天狗の木って言うんだよ。知っての通りうちの学校は神社の跡地に建っていてな、そこに御神木があったんだよ。その木の幹がなあ、腐り始めて切ることになったんだ。危ないから。そしたらな、木を切ろうとした教師や事務員、業者が立て続けになくなってなあ。事故、病気、自殺…ちょうど俺がここの学生だった時だ。」 「…は?」 「まあ、最終的には切ったんだけどな。…ほらそこに小さな杉の木が植えてあるだろ?それを天狗様の宿代にしたら祟りは起こらなかったんだと。○○頑張れ、ハッハッハ」 ニヤニヤする担任。どうも今の話を知っていたようだ。 その後、自分が冷や汗をかきながら一生懸命、草を取ったのは言うまでもない。
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