『記憶』

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双星の月―15日。   空は果てしなく青く澄んでいる。   私は草むらに体を沈め、ぼんやりと空を見上げていた。 土がほのかに温かく、風は草の匂いで満ちている。   優しい自然に溶け込み、雲にでもなったかのような…まどろみ。   「よぉ、アイラ、気分はどうだ?」   頭上からの聞き慣れた声に、慌てて半身を起こす。   太陽をバックに立つ、金髪オールバックの大丈夫。 安心と眩しさから目を細める。   「お父様…少し緊張しています」   「お前なら大丈夫。やれるさ」   優しい声。 不器用に頭を撫で回す大きな手。 少しずつ緊張が和らいでいく。   「それと戦場では団長と呼べ、良いな」   私の父親―ベオウルフは、金色の狼の異名を持つ、傭兵団の団長。   父親、と言っても血は繋がっていない。 正確には父親代わり、だ。   私には小さい頃の記憶がない――。   物心ついた時には傭兵団の中で生活していた。   母親のことが気になってベオウルフに尋ねた時に、私は初めて真実を知った――。
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