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その時、目の前にギターかベースのどっちかを担いだ男の人がいた。
あたしは、何も気にせずに歩く。
「うわっ」
前の人が、転んだみたいだ。
いきなり目の前から、消えたから。
周りからは、くすくすと笑う声が微かに聞こえる。
「大丈夫ですか?」
いつもは素通りするのに、何故か自分でも知らぬまま声をかけていた。
「はい。一応は……」
その人は立ち上がった。
頭を左右に振ったり、コートについた雪をはらう。
手の届きにくい背中に雪がついていたから、あたしも手伝ってみた。
「ありがとうございます」
(ギター弾いてるんだ……)
そして、男の人はギターが無事か見ている。
大事なモノというのが、顔の表情によってわかる。
どうやら、転んだときの破損は無かったようだ。
「それ、弾くんですか?」
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