sea.01 出会い

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その時、目の前にギターかベースのどっちかを担いだ男の人がいた。 あたしは、何も気にせずに歩く。 「うわっ」 前の人が、転んだみたいだ。 いきなり目の前から、消えたから。 周りからは、くすくすと笑う声が微かに聞こえる。 「大丈夫ですか?」 いつもは素通りするのに、何故か自分でも知らぬまま声をかけていた。 「はい。一応は……」 その人は立ち上がった。 頭を左右に振ったり、コートについた雪をはらう。 手の届きにくい背中に雪がついていたから、あたしも手伝ってみた。 「ありがとうございます」 (ギター弾いてるんだ……) そして、男の人はギターが無事か見ている。 大事なモノというのが、顔の表情によってわかる。 どうやら、転んだときの破損は無かったようだ。 「それ、弾くんですか?」
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