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数時間後、雨宮は再び部屋を訪れる。
「やぁ、少しは落ち着いたかな?」
「俺…何か悪いことしたみたいで…。すみません…」
自分のした事を反省したのか、素直に謝る。
「気にすることないよ。こういうのには慣れてるから」
「……」
そう言うと雨宮は腰を低くし、手足を縛っていたヒモをほどく。
「もう良いんですか…?」
「うん、どうしてもやむを得ない場合以外は縛る必要ないからね…。落ち着いたみたいだし、もう大丈夫だろう」
ゆっくりと立ち上がる。
何だか、何ヶ月も拘束されていた気分である。
「…俺…何で生きてるんですか…?」
唐突に質問する。
不思議とこの看護師には親近感があった。
「生きる…か。口にするのは簡単なのに、実際生きるのって難しいよね…。
僕も君みたいに縛られたりした経験あるから、その気持ち良く分かるよ。"動けねー"って叫んでたし」
「そうなんですか…」
自分と同じ経験をしている。
何となくこの看護師には色々と話せそうな感じだった。
「今でも死にたいと思ってる?」
「はい、機会があれば…」
「そうか…すぐには無理だよね。とにかく、何かあったらすぐに僕に言ってね」
「分かりました…」
軽く手を振り、雨宮は部屋を出る。
身体の自由を取り戻した淳は、部屋を探索してみる。
窓は手前の柱のせいで近づくことすら出来ない。
扉には予想通り鍵がかかっており、覗き穴らしきものが高い位置にあるだけである。
正に逮捕されて監禁されている気分だ。
「こんなはずじゃなかったのに…何で死ねないんだよ……」
成す術もなく、ベッドへと倒れる淳。
点滴台が邪魔になる。
「くそ…早く死にたい……」
そのことしか今の淳には考えられなかった。
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