第一話~未遂~

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数時間後、雨宮は再び部屋を訪れる。 「やぁ、少しは落ち着いたかな?」 「俺…何か悪いことしたみたいで…。すみません…」 自分のした事を反省したのか、素直に謝る。 「気にすることないよ。こういうのには慣れてるから」 「……」 そう言うと雨宮は腰を低くし、手足を縛っていたヒモをほどく。 「もう良いんですか…?」 「うん、どうしてもやむを得ない場合以外は縛る必要ないからね…。落ち着いたみたいだし、もう大丈夫だろう」 ゆっくりと立ち上がる。 何だか、何ヶ月も拘束されていた気分である。 「…俺…何で生きてるんですか…?」 唐突に質問する。 不思議とこの看護師には親近感があった。 「生きる…か。口にするのは簡単なのに、実際生きるのって難しいよね…。 僕も君みたいに縛られたりした経験あるから、その気持ち良く分かるよ。"動けねー"って叫んでたし」 「そうなんですか…」 自分と同じ経験をしている。 何となくこの看護師には色々と話せそうな感じだった。 「今でも死にたいと思ってる?」 「はい、機会があれば…」 「そうか…すぐには無理だよね。とにかく、何かあったらすぐに僕に言ってね」 「分かりました…」 軽く手を振り、雨宮は部屋を出る。 身体の自由を取り戻した淳は、部屋を探索してみる。 窓は手前の柱のせいで近づくことすら出来ない。 扉には予想通り鍵がかかっており、覗き穴らしきものが高い位置にあるだけである。 正に逮捕されて監禁されている気分だ。 「こんなはずじゃなかったのに…何で死ねないんだよ……」 成す術もなく、ベッドへと倒れる淳。 点滴台が邪魔になる。 「くそ…早く死にたい……」 そのことしか今の淳には考えられなかった。
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