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数日後、雨宮が再び部屋を訪れる。
「おはよう、気分はどう?」
「……あまり良くないです…」
目線は合わせずに答える。
「そうか…実はね、この保護室から一般病棟に移る許可が出たんだよ」
「……ここから出られるんですか?」
「そうだよ。本来ここ(保護室)は精神科に入院する時に、必ず一度入るシステムになっているからね」
荷物をまとめながら話をする。
「雨宮…さん…」
「ん?」
「いえ…何でもないです…」
とにかくここから出られれば、自殺する機会が増えるはず。
淳は落ち着いたふりをして、機会を見て自殺することを考えていた。
やがて一般病棟へと部屋が移される。
病棟内は広く、広間のような所に大きなテレビがある。
患者だろうか。
あちこちに普段着を着た人がいる。
中にはどこにでもいそうな人も少なくない。
(ここが精神科なのか……)
淳にとって精神科への入院は初めてである。
過去にも何回も自殺未遂をしているが、入院までには至らないものだった。
やがて、広間から一番奥の部屋へと案内される。
「着いたよ。ここが今日から君の部屋になるからね」
二人部屋だった。
他の部屋は四人部屋なのだが、空いてる部屋がなかったのだろうか。
どちらにせよ、自殺をするつもりの淳には関係の無いことだった。
「入浴とか、食事のこととか色々書いた説明書があるから、一通り目を通しておいてね」
荷物を整理しながら話す。
「……」
淳は一応説明書に目を通す。
入浴は月、水、金の三回。
土日はシャワーのみ。
食事は朝7時、昼12時、夕17時30分。
2パターンの食事内容から選べるようだ。
「あぁ…それから持ち物だけど、刃物とかヒモみたいな危険な物は持ち込み禁止になってるからね」
カミソリ、携帯の充電器、鏡、爪切りなど、とにかく身体を傷つけるものは全て持ち込み禁止になっていた。
(どうせ死ぬんだ…関係ない…)
「さて、こんなものかな?もうすぐ昼食の時間だから、アナウンス聞こえたら食堂に来てね」
そう言うと雨宮は部屋を出る。
「…食事なんか…いらない」
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