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「今回の出展テーマは『人物』だ」
部長がそう言った瞬間、彼女の顔が、嫌そうに歪んだ。
☆☆☆☆☆
「最悪」
皆が写真の題材を探しに出掛けると、彼女もとい、木ノ下鈴(きのしたりん)は、そう言って机に伏した。
「まぁまぁ、しょうがないじゃん。出展テーマなんだからさ」
そう言って彼女をなだめるのは俺、小山俊(おやましゅん)だ。
「……」
「ん?何?」
木ノ下がじっと俺のことを見てくるから、不思議に思って、木ノ下に訊いた。
「ウザイ」
……返ってきたのは、その一言だった…。
木ノ下は机に伏したままそう言うと、横にあるカメラに手を伸ばした。
「ひっで~」
俺は、その言葉に苦笑した。
「で、木ノ下は題材探しに行かねぇの?」
「てか、お前は題材探しに行かないの?」
机に伏していた顔をあげて、今度は木ノ下が俺に訊いてきた(俺が木ノ下に訊いたはずなのに…。質問を質問で返されたよ…)。
「……別に、探しに行かなくても、ここからでも見付かるだろ?」
一瞬、俺は苦笑したが、そう答えた。
「え?」
俺がそう言うと、木ノ下は『わけがわからない』といった顔で俺を見た。
「例えば…」
と、俺は窓に近付いて開ける。
「ほら、こっからでも充分テーマに合ってるぜ?」
そう言って窓の外、グランドを指差す。
「まぁ…」
「だろ?」
「……でも、外に出た方が良いものが見付かる」
木ノ下はそう言って、カメラを持って部屋を出ていった。
「……結局、探しに行くじゃん」
俺は木ノ下の出ていったドアを見て微笑んだ。
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