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「よっ!」
「……よ」
俺が挨拶をすると、一拍おいて、木ノ下が返事をした。
「何かいいモノ撮れたか?」
俺が隣に腰をおろすと、木ノ下は一瞬俺のことを見たが、すぐに夕焼けに目を戻した。
「まぁ、面白いのが…」
そう言って木ノ下は、俺を見て不適に笑った。
「ふ~ん…」
俺はそれをあまり深く考えず、相槌をうった。
「小山は?」
「俺?俺も良いのが撮れた」
俺は満足気にに言った。
「綺麗…だな」
すると、ポツリと木ノ下が言った。消え入りそうな、小さな声で…。ま、俺が木ノ下の言葉を聞き逃すワケないけど。
「…そうだな」
そんなことを思いながら、俺は木ノ下の意見に賛成した。
「よっし…。じゃ、俺は帰るな」
「え?」
俺がそう言って立ち上がると、木ノ下は悲しそうな目をして俺を見た。
「撮るもの撮ったし、ここには夕焼け見に来ただけだしな」
「…そっか」
俺がそう言うと、木ノ下は悲しそうな目のまま、下を向いた。
「じゃ、また明日な!」
俺は元気良く言うと、木ノ下は手をあげて応えてくれた。
「あ…」
自転車に乗り、こぎだそうとしたところで、俺は動きを止めた。
「木ノ下!」
振り返って、コンテナの上の木ノ下を見る。
木ノ下はゆっくりと俺の方を見た。
「写真、お互いに入賞するといいな!」
俺がそう言うと、木ノ下は一瞬目を見開いたが、すぐに笑顔になり…。
「あぁ!」
と言った。
俺はそれを確認すると、ニッコリ笑い、自転車をこいで坂を降りた。
……写真が入賞したら、あいつに勝手に撮ったことを謝って、んでもって、言葉を伝えよう。
俺のこの想いを…。
☆☆☆☆☆
数日後…。
大賞…『夕焼けと君』
小山俊
END
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