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「すごかったな」
「そうだな」
ショーを見終わった後も、鈴は目を輝かせていた。
「り~んっ」
「ん?」
「コレ、な~んだ?」
そう言って俺はさっき撮った写真を鈴に見せた。
「!?おま、何撮ってんだよ!」
鈴はカメラを奪おうと手を伸ばした。
「おっと」
しかし、その前に俺はカメラをバッグにしまった。
「消せ!今すぐ消せ!」
「まぁまあ、そんなに怒るなよ。これやるから」
そう言って俺は鈴の手に小さなキーホルダーを乗せた。
「イルカ?」
鈴は手に乗せられたイルカのキーホルダーを見ながら、首を傾げた。
「あれ?いらない?すっげぇ目輝かせながらショー見てたから、『イルカ好きなのかな?』って思って買ったんだけど…。ま、いらないんなら俺が…「いる!!」
そう言って俺は言いながら鈴の手からイルカのキーホルダーを取ろうとしたが、その前に鈴がキーホルダーを自分の手の中におさめた。
「最初から素直にそう言えよ~」
そんな鈴を俺は微笑ましく思った。
「…俊」
そしたら、鈴が俺の服の裾を引っ張った。
「ん?」
俺が返事をしながら振り向くと、鈴は満面の笑みでこう言った。
「ありがと!」
「///」
不覚にも、俺は赤くなってしまった。
ていうか、今のものっすごいシャッターチャンスだったじゃん…。カメラ、バッグの中だし…。
「俊?」
真っ赤になったまま固まっている俺を見て、鈴は不思議に思ったのか、俺の顔を覗き込んでいた。
「な、何?」
急に顔を覗き込まれた俺は、焦って顔をあげた。
「どしたの?」
「なんでもないよ」
「…そっか」
俺が言うと、鈴はニカッと笑った。
「さ、他のとこも回ろうぜ」
「うん!」
そう言うと、鈴は嬉しそうに返事をした。
満面の笑みは撮れなかったけど、イルカを見る輝く瞳の君を撮れたから、ま、いっか。
END
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