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「最低」
私はそう言って彼に携帯を投げつける。
加減をしなかった為、携帯は勢い良く彼の額にヒット。
「……っ」
「自業自得だよ」
私は捨て台詞を吐き、痛がる彼を放置したまま部屋を飛び出した。
後ろから彼の声が聞こえたが、私は振り返ることなく二階建てのアパートの階段を駆け降りる。
そして服の袖で涙を拭いながら、三時間程前に彼と歩いた裏道まで走り続けた。
――あっ。鞄忘れた。携帯もないや。
裏道の入口に着いた時、夜風の冷たさに多少冷静さを取り戻した私は何も持たずに彼の部屋を飛び出した事に気が付く。
しかし今更取りに戻る訳にもいかない。
私は仕方なくトボトボと歩きだした。
裏道を暫く歩いた後、ふと後ろを振り返る。
しかし彼が追い掛けてくる気配はない。
――私を追い掛けてくれるのは半月だけか。
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