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「ありがと」
何となく月に向かって言ってみる。
心なしか月が煌めいたのは気のせいだろうか。
そして私は再びトボトボと歩き出す。
暫くすると一本道だった裏道が左右に分かれた。
左の道を行けば駅へと行く事ができる。
しかし駅に行っても手ぶらの私には何もする事がない。
私は少し迷った後、右の道を進む事にした。
――小学生の頃を思い出しちゃうな。
小学生の頃は通った事のない道なんかを見つけると、未知の世界を発見したみたいでワクワクしたものだ。
しかし今はそんな気分にはなれない。
「とりあえず進みますかね。相棒君」
今私の中で空に浮かぶ半月が相棒と決定した。
例え相手が月でも一人ぼっちよりはいい。
そうして未知なる道を少し進むと、急に視界が暗くなった。
驚いて振り返ると、高層マンションに月が隠れてしまっていた。
私は慌てて月が見える場所まで小走りで急いだ。
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