『あなただけ 君しか』

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 最初の内は緊張もあって、全てを彼のリードに任せていた。    しかし根が男らしいと言うか大雑把と言うか、女らしい事の苦手な私は段々と‘私らしさ’を表に出すようになった。    食事はお洒落なレストランよりも大衆食堂や居酒屋なんかが好き。  小さくひと口ずつ料理を食べるなんて食べた気がしない。  食べる時はガッツリといかなくては。    スカートは足元が涼しすぎるし、何だか私のキャラじゃないから履かなくなった。    ‘私は私’と女の子らしい動作なんて気にしなくなった。  ‘気配り上手な女’頑張ってはみたが空回りになる事の方が多い。    料理や裁縫にも挑戦したけど彼の方がずっと上手だった。    思った事は直ぐ口に出すようになった。  苛々している時なんかはかなりきつい言い方をした。    それでも彼はいつも笑っていた。  初めて会った時と同じ笑顔で。   「今のままでいいから」    そう言ってくれる彼に私は甘えた。
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