第一章 保護者教師

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どれぐらい時間が経っただろうか? 僕は神谷と列んでパチンコ台の前に座りながら会田恵の父親を観察していた。 会田の父親はひたすら台に向かって打ち続けているがどうも調子がでないようだった。 「神谷先生、いつまでこうやってるつもりですか?僕はそろそろ行かないと……」 会田の父親に比べ神谷は何気ない顔をしながら既に3箱をパチンコ玉で埋め、足元に積み上げていた。 「よし、そろそろ頃合いだな。キクリン、ちょっと、ここ見てて。誰も座らせちゃダメだよ」 そう言うと神谷は積み上げたパチンコ玉を僕の足元に移し、席を離れ会田の父親が座っている台の隣の席に腰を下ろした。 神谷はパチンコ台に金を入れ、会田の隣で適当に打ち始めた。 しばらくすると神谷の台から再び大量のパチンコ玉が流れ出し始めた。 神谷は打ち続けながら隣に座っている会田の父親に何やら話し掛けていた。 しばらくすると神谷は席を立ち、僕の方に戻ってきた。 その代わりにそれまで神谷が座っていた台に会田の父親が座り大量のパチンコ玉を放出させていた。 「神谷先生、一体何をしてきたんですか?」 「まぁ、いいから見てろって。それよりキクリン、今自分の台に残ってる玉使い切っちゃえよ。もうすぐ帰るから」 「……神谷さんの玉は換金してこなくていいんですか?」 「あ~これはいいよ。換金しないで使っちゃうからから」 そう言うと再び神谷は立ち上がり、今度は近くに立っていた従業員に何やら話し掛け始めた。 神谷に話し掛けられた従業員は慌てて店の奥へ走っていった。 神谷は僕の隣の席に腰を下ろし、ニヤニヤしながら会田の父親を見つめていた。 そんな神谷の視線にまったく気付かず、会田の父親は夢中で打ち続けていた。 しばらくして三人の従業員が会田の台を取り囲んでいた。 「お客様、ちょっとよろしいですか?」 そう言って店長風の従業員が会田が打っていた台を調べると、台の下から磁石のような特殊な機器が出てきた。 「お客様、ちょっとよろしいですか?」 「待てよ。俺はこんなの知らないぜ。そうだ、アイツだ。あの男がさっきまでここに座ってたんだ」 そう言って会田の父親は神谷の方を指指して叫び声をあげた。 【続く】
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