第一章 保護者教師

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「お帰りなさい」 ドアの開く音に反応するように恵は剛に言った。 「今、ご飯の仕度するね」 立ち上がろうとしていた恵を剛は上から踏み付けるように蹴り倒した。 その勢いでテーブルの上に置かれていた焼き魚と肉じゃがとシーザーサラダが床に飛び散った。 「今はムシャクシャしてて飯どころじゃないんだバカヤロー!先に風呂に入る」 「……ごめんなさい」 呟くように言いながら、恵は床に散らばったおかずの片付けをしていた。 するとすかさずもう一発の蹴りが恵の顔に降り注いだ。 「そんなの後にしろよ!風呂に入るって言ってるんだよ。さっさと準備しろよ。いつまで経ってもトロイ奴だな」 「顔は蹴らないでよ。ただでさえ体育見学しなくちゃいけないんだよ。顔にまで跡が残ったら学校行けなくなるじゃん……」 次の瞬間、剛はおもいっきり恵の顔を蹴り上げた。 「親に口答えしてんじゃねぇよ!どこの世界に子供に気を使う親がいるんだ。顔に跡が残る?だったら学校なんて行くんじゃねぇよ。高校なんて行かなくても中卒で充分だろ。今はいくらでも働けるんだ。キャバクラでも風俗でもどこでもいいから金を稼いでこいよ。バイトの金を学費なんかに注ぎ込んでるんじゃねぇよ」 そう言いながら、剛は床に倒れている恵を何度も踏み付けた。 剛は息を乱しながらバスルームに行き、シャワーの湯を浴槽に溜め始めた。 リビングに戻ると、恵はまだ床の上に倒れたままだった。 「いつまで寝てんだこのヤロー!」 剛は恵の髪を掴み上げ、引きずるようにして恵をバスルームに連れていった。 バスルームに恵をほうり込んだ剛は、恵の服を引きちぎるように乱暴に脱がし、浴槽の中に押し込んだ。 全裸になった恵の身体には無数のアザや擦り傷が生々しく残っていた。 この傷やアザを隠す為に、恵は体育を休まなければならなかったのだ。 剛は自分も服を脱ぐて浴槽に入り、その場に突っ立っている恵に言った。 「さっさとしろよ」 その言葉に反応するように恵はスポンジにボディーソープを付け、剛の体を洗い始めた。 この剛の傍若無人な振る舞いは今日に限った事ではなかった。 剛の気分によりその強弱はあったが、これが会田家の日常だった。 【続く】
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