99人が本棚に入れています
本棚に追加
/173ページ
「おはようございます。え~今日は……」
僕は職員室で他の先生方と供に教頭の話を聞いていた。
校長以外の全ての職員が毎朝ここで教頭の話を聞くはずだった。
だが、あの神谷の姿は無かった。
今日だけではない。
僕がこの学校に赴任してから既に一週間が経っていた。
あの日初めて神谷と出会って以来、何度か校内で顔を合わせたが、彼はいつもジャージ姿で、とても仕事をしているようには見えなかった。
保健の細川先生をしつこく追い回したり、学食を何杯もおかわりして食べていたりと、とても教師とは思えなかった。
しかも、朝のミーティングには一度も顔を出した事はない……。
それでも神谷は何のおとがめもなく、教頭や他の先生方も彼については何も話そうとしなかった。
そのくせ神谷は毎晩のように僕をキャバクラや飲み屋に誘い、ドンチャン騒ぎの末、毎回おごってくれた。
一連の神谷の行動を見ていて僕は不思議に思っていたが、この学校内ではそれがまかり通っていた。
一体、神谷はこの学校でどんな仕事をしているんだろうか?
そんな中、ある事件が起きた。
一人の保護者が校内にクレームつけにやってきたのだ。
それは見るからにセレブ気取りの嫌みな雰囲気をかもしだした三十代の女だった。
女は僕に小等部の職員室に案内するように命令してきた。
女は小等部の生徒の保護者で、自分の子供はホコリアレルギーだから雑菌やホコリが一切ない教室で勉強させて欲しいと言って職員室に乗り込んできたのだった。
小等部の学年主任が必至に宥めたが、保護者の怒りは治まらなかった。
この保護者は前にも同じクレームをつけたのに、何で他の生徒と同じ教室なのかと怒っていた。
それに加え、この保護者は子供の治療費まで払えと言ってきた。
すっかり困り果てている学年主任の前にジャージ姿の神谷が現れた。
神谷の表情はいつものようにニヤケていたが、その眼はまるで別人のように鋭く光っていた。
神谷は一体何をしようというのか……?
【続く】
最初のコメントを投稿しよう!