さらば!紫雲寮生。そして新たな旅立ちへ…。

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仙田君とはたくさんの思い出があった。 同じ担任で供に行動した事、指摘や暴言で腹が立った事、励まされた事、励ました事、紫雲寮で一番濃い存在の仙田君は俺の中でも一番心に残る存在だった。 考えてみれば最初は無茶苦茶で大嫌いだった。 日記にも仙田君の悪口を何度書いた事か。 だが今は違う。 仙田君は本当に良い奴だ。 俺も心を許す事ができた。 そしてもう二度と会えないという事が寂しいと思う。 だがそれは避ける事ができない事だ。 仙田君は荷物をまとめ、皆の前に立った。 そして始まった。 誰よりも迷惑をかけ、誰よりも寮を盛り上げた仙田君の激励集会が。 皆は仙田君との思い出話を熱く語った。 仙田君は目に涙をためてうなずいていた。 本当に仙田君は皆に愛されていた。 生意気で憎たらしい仙田君は憎めない誰からも好かれるキャラなのだ。 気がつけば皆が涙していた。 これほど皆が泣いて別れを告げたのは仙田君の時だけだ。 そして俺が別れを告げる時がきた。 立ち上がって話し出そうとした瞬間俺も涙をこらえ切れず涙をこぼしてしまった。 そして「仙田君は本当に生意気で憎たらしくて始めは本当に大嫌いでした。でも同じ担任の先生で近い存在で仙田君を見ていると仙田君は本当に、誰よりもいい奴でした。半年間も一緒に生活してきてもう二度と会えないなんて考えられないです。最後の期間お互いで高め合った時は本当に楽しかったです。そして僕がやる気をなくした時励ましてくれた時本当に嬉しかったです。でも仙田君はあぶなっかしいんで再犯しそうで心配なんですよ。でももし仙田君が再犯したら僕は絶対に許さないんでそれだけ覚えといて下さい。そして彼女と子供を大切にして下さい。仙田君は僕の中でどの寮生よりも特別でした。これから社会に出ても頑張って下さい。」 俺は仙田君に全ての思いを伝えた。 全員の別れの言葉が終わり最後に仙田君の言葉だった。 仙田君は全ての寮生にアドバイスを伝えた。 俺にも「親を大切にして上げて下さい。そして残りの期間僕の変わりに寮を盛り上げて下さい。それができるのは岡田君だけです。僕のために泣いてくれてありがとう。」と言葉を残してくれた。 仙田君が寮を出る時俺達は盛大な拍手で仙田君を見送った。 こんな時ぐらい涙を見せればいいのに仙田君は涙をこらえたまま寮を出た。 本当に最後まで強がりだ。 こうして仙田君の激励集会が終わった。
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