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「ちょー、なんだよ、竜。態度悪いぞー」
「うるせー」
店を出ると、むっとするような暑さに顔をしかめる。由貴は俺の態度に、やれやれといったように肩をすくめた。
そのまま横断歩道を渡ろうとしたとき、また後ろから声をかけられた。
「待って!」
振り返ると、そこには黒髪ショートの女、瀬野美月。
「……何」
由貴は不思議そうな顔をして瀬野を見ていた。自分でも不機嫌な声を出しているのがわかる。
「これ、忘れ物」
「……は?」
はい、と笑いかけながら手渡してきた。手の中には、何がいいのかわかんねえ小学生に人気があるやたらリアルに作られた虫の模型。
確かそれは、偶然やっていたモックのキャンペーンのクジであたった景品。
いらねー。
「なに、竜、カナブン好きなの?」
「好きなわけあるか」
俺はそのまま近くのゴミ箱に捨てようとした。
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